肥溜め日記「草食系男子」
今朝はいつものように朝起き、水辺へ行って行水をした。
それから木々の根元から生えた新鮮な草を食べ、朝食を済ませてから会社へと向かった。
そう、私は草食系男子である。
草食系男子は天敵、肉食系女子に日々脅えている。
ありとあらゆる手段で肉食系女子は草食系男子を誘い出す。
もし肉食系女子に捕まってしまうと、草食系男子は食べられてしまうという。
肉食系女子は非常にグルメなのだそうだ。
会社帰り、駅前で私は凍り付いた。
駅前に肉食系女子がビラ配りをしているのだった。
私が呆然としていると、一人の肉食系女子と目が合ってしまった。
しまったと思ったときにはもう遅く、肉食系女子は獲物を見つけたとばかりにすぐさま私に近づいて
「今、あちらのビルで絵画の展示会をやっているんです」と言った。
肉食系女子は非常に良い香りがする。
その匂いは草食系男子の思考回路を鈍らせる作用がある。
私はその匂いにクラクラしてしまった。
なんて良い香りなのだろう。
きっと展示会へ行っても絵を買うまで帰れないということはないし、それに絵は価値が落ちないからお金があるうちに買っておいた方がいいかもしれない。
しかし私は騙されなかった。
これは肉食系女子の罠である。
もしビルへ入ってしまえばもう二度と出て来ることは出来ないであろう。
肉食系女子はその長い爪で腹を一瞬のうちにして裂き、腸を引っ張り出す。
そしてその腸に刻んだ肉を詰め、ソーセージとしておいしく頂くのだ。
まったくもって恐ろしい。
私は「急いでますので」と言って、その場を去ろうとする。
しかし他の肉食系女子が寄って来て、それを阻止しようとするのだ。
私は足がガクガクと震えた。もう駄目だ、ここで私の人生は終わるのだと思った。
その時だった。
サラリーマン風の草食系男子が他の肉食系女子の罠に見事にかかり、ビルへと連れて行かれたのだった。
それに続くようにして他の肉食系女子も私から離れて行った。
助かった。私は助かったのだ。
その後、ビルの方から男性の叫び声が上がり、ビルの窓が赤茶色に染まった。
私は必死に家へと向かって走った。
外は恐ろしいことばかりだ。ああいやだ。もう外へは出たくない。
それにしてもあの匂い、いい匂いだったな……
いけないいけない。惑わされてはいけない。
無事に家に着き、私は玄関の鍵を閉めてほっと一息ついた。
そして私は、なんて馬鹿な妄想をしていたのだと落ち込んだ。
自分にだけ女性が寄って来てくれなかったことに落ち込んだのだった。
草食系男子とは、決してモテないわけではないが恋愛に積極的でない男性のことを言うのだそうだ。
私は草食系男子ですらない、ただの草だった。

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